國学院大学 人間開発学部 健康体育学科 神事 努 先生 | 大学受験予備校・四谷学院の学部学科がわかる本        

Interview

野球の投球でよく言われる「キレ」や「ノビ」とは何なのか?
抽象的な投球指導の言葉を力学的に説明する

國学院大学 人間開発学部 健康体育学科 准教授
神事 努 先生


怪我なく投球パフォーマンスを上げるために必要なこととは?

私はバイオメカニクスという分野で、主に野球の投球動作に関する研究をしています。バイオメカニクスは、生理・解剖学的な生体(バイオ)の運動現象を力学(メカニクス)に照らして解明する学問です。ヒトの身体(用具を含む)へ作用する力学的な力が、身体とその運動にどのように影響を及ぼしているのかを明らかにしていきます。特にスポーツを研究の対象とした場合、スポーツパフォーマンス(競技成績、成果、できばえ)を向上させるためにはどうしたらよいか、また、障害を予防するにはどうしたらよいかについて研究を行っています。例えば野球の大谷翔平選手は、2023年、MVPを獲得しながらも肘を怪我してしまいました。怪我なく高いパフォーマンスを発揮することはとても難しいことです。バイオメカニクスは、安全にかつ楽しくスポーツを行うためにはとても重要な学問領域と言えます。
私は投球動作の中でも、ボールの回転について研究を進めています。ボールの「キレ」や「ノビ」などは、運動指導の中でよく使われる言葉ですが、これらを決定している要因は実は良くわかっていませんでした。ボールの回転数や回転軸の角度を数学的に算出し、パフォーマンスの高い投手の特徴を調べるなど、ボールに回転を与えるメカニズムの解明に関する研究を行っています。

小2から始めた野球が怪我でできなくなった

私は小学校2年生から野球を始め、大学では体育学部に進学し、大学1年生まで野球をプレーしていました。しかし、大学1年生のときに、肩と腰を痛めてしまい、プレーができなくなってしまいました。非常に悔しい思いもしましたが、怪我をしてしまった原因を知りたいと思い、解剖学や力学の勉強を始めました。大学の頃は高校野球の指導者を目指そうと、コーチングについても学んでいたのですが、何気に使っている言葉に疑問が出てきました。現役時代、私はキャッチャーだったこともあり、ボールの「キレ」や「ノビ」という言葉を当たり前のように使っていました。この他にも「タメを作りなさい」、「軸で回転しなさい」など、指導現場でよく使うわりに抽象的でよくわかっていない言葉がたくさんあります。これら言葉を力学的に解明したいと思い、研究がスタートしました。微分方程式を解き、それを計算するプログラムを書くなど、スポーツばかりやってきた私にとって難易度の高いものばかりでしたが、新しいことの発見も多く夢中になって研究を進めました。

選手の競技力向上と障害予防に役立てられてこそ研究が活きる

解析のためのプログラムコードを書き、実験を行い、データ分析を行うなど、結果が出るまでは多くの時間を費やします。それでも、研究を通して誰も知らないことを力学的に説明できたときは、興奮し、からだの内側から湧き出るような充実感を得ます。しかも、先行研究や指導書で言われていたことと異なる新しい発見だったりすると、苦労が吹き飛びます。
また、データの活用という部分もやりがいを感じています。研究者の仕事は、論文を発表することが1つのゴールかもしれませんが、私としては得られた知見が選手のパフォーマンス向上や障害予防に役立てられなければ意味がありません。選手が競技力向上に科学的な知見を活用してくれたときも充実感を感じます。

神事先生からのメッセージ

スポーツ科学に興味のある皆さんは、スポーツの魅力に惹かれ、何かしらの疑問や興味を持っていることと思います。大学で「勉強」をし、知の広がりに触れることで、疑問を解決することができるでしょう。でも、スポーツ科学の分野では、まだわかっていないことがたくさんあり、解が得られないこともあります。これを明らかにしていくことが「研究」で、大学生活の中心となる活動です。普段から疑問を持ち続け、大学での研究に活かしてほしいと思います。

関連情報

学部から探す

大学の学問系統別にご紹介しています。さっそく興味のある学問から読んでみましょう。

四谷学院の「ダブル教育」
四谷学院について詳しくはこちら
個別相談会はこちら
資料請求はこちら

ダブル教育とは?

予約コード17GJWAZ

『学部学科がわかる本』冊子版をプレゼント

予約コード17GJWAZ

ページトップへ戻る